期間:2009.11.11〜15
場所:新宿・スペースゼロ
3年ぶりにショーGEKI大魔王の復活である。演目はショーGEKIの前身ツール・ド・フォース時代の作品のリバイバル。
<Introduction>
日本史上最大の逃亡劇、
それは歴史的兄弟喧嘩のはての大鬼ごっこ。
逃げるのは源平合戦のヒーローである。
弟・義経と弁慶。
追うのは初めて世を治めた武士として
歴史に名を刻む兄・源頼朝。
源氏のため、兄の命に従い平家と戦い勝利した義経は
なぜ兄、頼朝の反感を買ってしまったのか…。
執拗に弟・義経を追う頼朝はその妖力で、源平合戦で散って怨霊となった者たちを
蘇らせて追っ手にし、さらに義経を慕う女達をも操り義経を追わせる。
圧倒的不利の中、ただ生きのびるためだけに
ひたすら逃げる義経とそれを守る無敵の魔神・弁慶は
どこまで、いつまで逃げ切れるのか。
客入れの段階からなんかしらの仕掛けがあるのが大魔王のお楽しみ。今回は、変装した義経(七枝実さん)と弁慶(内堀克利さん)が客席で、逃走資金を集めてまわってた。これがホントにお客さんからお金を集めるんである。と言っても1円玉onlyなのであるが(笑)。ちなみに終了後にちゃんとロビーで返してた。気付かないで帰っちゃった人も多いような気がするが(爆)。
もう一つ、舞台上ではタキシードを着て、目と口のところに穴が空いた紙袋を被った頼朝(おのまさしさん)が、お客相手に延々アメリカンジョークをしゃべるという、なんともおのさん向きな趣向。なんでアメリカンジョークなのか訊いたんだけど、よくわからんらしい(笑)。一説によると、頼朝は当初、バットマンのジョーカーっぽいキャラで、ジョークはその名残だとか。
アメリカンジョークと言えば、日本人にはどこが面白いのかよ〜わからんものが多いのだが、おのさんのネタは若い人にはかなり受けていた。や、実際面白かったけどね、爆笑するより、上手いってタイプのネタだと思うので。
ショーGEKIを知ってる人の多くが、おそらく思ったであろう事、それは「七枝さんが義経?、弁慶じゃないの?」、筋肉漢ですからなぁ(笑)。まあ、内堀克利さんの方が少し背がでかいし、このキャスティングは正解だったと思う。
という訳で、義経役は七枝実さんである。歩きだす時の独特の七枝ステップ(勝手に命名)は健在。それにしても、筋肉漢の印象が先行してたけど、なかなか多彩な役をこなせる役者さんである。
内堀克利さんも、背の高さと声のでかさから弁慶役が結構はまってた。長刀を使った殺陣は大迫力。所謂”弁慶の泣き所”がホントに弱点なのが、そこはかとなく可笑しい。義経・弁慶もののお芝居は過去3度見てるけど、出てこなかったからねぇ、意外と盲点である。
チラシを見る限り、義経の味方は弁慶だけかと思ってたのだが、実際はもう一人、那須与一(鈴木とーるさん)がいる。船上の扇を見事に射抜いた時、義経の命を褒美としてもらう。ゆえに他の奴に義経を殺させる訳に行かず、結果として義経を護ることになるという、ある意味ツンデレ?(爆)。
出番はさほど多くはないが、義経達がピンチの時に現れて活躍するので、所謂”美味しい役”である。
義経を慕う女性たち(勝手に命名:義経ガールズ)は、なかなか個性的な面々となった。
静御前は、五條結巳さんと矢富はるかさんのダブルキャスト。なんとお芝居(というか、演技自体)初挑戦。言われてみれば若干声量が足りないように感じたが、それでも初めてとは思えなかった。一番小柄な五條さんと女性のなかで一番背が高い矢富さんと対照的(極端だよな(笑))。特技も五條さんが日舞、矢富さんが洋舞と真逆(?)だったりする。この特技の違いが劇中にあまり出てなかったのが、いささか残念なところ。
最後は、頼朝に操られて義経を殺そうとしたところを弁慶にばっさり。義経に抱かれて絶命。カワイソウ。
平家の血を引くわらび姫(小林こずえさん)は、最初登場した時「おぉ、これはお美しい」とゲデヒトニス調で言いたくなった程、見目麗しきお姿。元ミス鎌倉だから折り紙付きとは言え、衣装も含めて実に美しい。しゃべり方も、いかにも元平家の御姫様な凜とした感じで良い。その後、清盛に利用されてる間は子供っぽい口調になるという、ギャップがまた面白い。
最後は、那須与一が持って来たお札の力で清盛の魔力が解け、そのまま義経に抱かれて絶命。カワイソウその2。
郷御前(竹内美保さん)は、義経の正妻。しゃもじを使わせたら、弁慶をも圧倒する強さ。義経だろうが静御前だろうが容赦なくぺちぺち叩いてた(静御前役のお2人の感想を訊いてみたかったな(笑))。でも他の2人に比べて扱いがイマイチ。正妻なのに。
最後は、追っ手を止めようとして景時(辻崇雅さん)に斬られ、そのまま孤独に絶命。カワイソウその3。
とまあ、3人3様のかわいそうな最後を迎える義経ガールズであるが、一番かわいそうなのは郷御前だよな。他の2人は愛しの義経に看取られたので、忌まわの際のシチュエーションとしてはむしろ幸福であるとさえ言えるが、郷は景時に斬られてそのままほったらかし。かわいそ過ぎる。
源頼朝(おのまさしさん)は、魔力を持った人物で、本作における悪の主役。でも、子供っぽいというかヲタクというか、あまり憎めないキャラである。政子(中津川浩子さん)に抱き着こうとする時、腰の辺りに行くのでなんとなくマザコンっぽいな〜と思ってたら、おのさん曰く「マザコンかつブラコンI(笑)。魔力を使う時、依り代として血を利用する為にリストカットするのだが、刃物の代わりに右手人差し指の爪を使うのが良い。アメリカンジョークのときから、爪が変に長いと思ってたらこういうことだったのね(本当は長いんじゃなくて、白く塗ってただけだったが)。
本作での北条政子(中津川浩子さん)は、用無しとなれば夫でさえ殺すような恐るべき女なんだけど、さほど悪党とは思わなかった。もし、「良い国を作る為に云々」が文字通りの本音なら、”悪党”ではなく、目的のためには手段の是非を問わない”政治家”であるのではないかと(但し、娘に対する態度は除く。ありゃヒドイ)。で、また中津川さんがこの手の役がはまるんだわ(笑)。
最近悪役づいてる辻崇雅さんは、悪役・梶原景時役。これがなんとなく憎めない頼朝と違って、純然たる悪党。なにせ富樫を殺すわ、郷を殺すわ、挙句の果てに頼朝までグサリ。その上、頼朝の影武者に大抜擢。所謂勝ち組ですな。とはいえ、頼朝の後継者が見つかり次第、政子にポイ捨てされるのは目に見えてるので、かわいそうと言えなくもない(笑)。
山本諭さんは、頭を剃り上げて平清盛役で登場。正直言って怪しい(笑)。死んだ平氏一族を蘇らせたモリモリブラザーズで義経を襲う。ブラザーズといってもたった3人なので弁慶にあっさりやられてしまうのだが、平氏一族は○盛という名前が多いのを良いことに新たな○盛が次々と蘇り…(笑)。しかし結局は鉄魔神・鬼若モードのスイッチを入れた弁慶に撃退されてしまう。いかんねぇ、戦力の逐次投入は悪い作戦の典型ですぞ。○盛全員一気に蘇らせれば勝てたかもしれないのに。まあ、清盛の魔力がそこまで強くはないんでしょうな〜。
わらび姫を依代にして義経に呪いをかけるのだが、この時姫の首筋に噛み付いたりする。これがフリじゃなくてホントに噛み付く(笑)。山本さんは加減がわからなくて悩んだらしい。
<蛇足>
初演時の清盛役は、「StarTrek・Voyager」のトゥボックの吹替等でお馴染みの青山穣さんだったそうな。こっちはこっちで観てみたい。
徳子(廣田朱美さん)は、平家最後の直系の血筋。壇ノ浦の戦いの後遺症で、人形のようになってしまい、時折歌う以外は無表情・無感情のままぼ〜っと歩き回るだけ。しかし、清盛を呼び出すために頼朝に手首を切られた時だけは、自分の血を見ながらなんともいえない笑顔を浮かべた。このシーンの印象は強烈。
権力で最強の女が政子なら、戦闘力で最強の女が巴御前(吉川亜州香さん)。亜州香さんと言えば、小柄ながらもその辺の男よりはるかにシャープな殺陣が魅力なので、巴はこの上ないはまり役。さらに今回は、絡む相手が内堀さん、佐藤さん、高倉さんといずれも腕利きの殺陣師であるから、「遠慮なしにできた」とのことで、1ランク上の殺陣が観られた。強いにもかかわらず、頼朝の魔力でおもちゃにされるシーンがおかしい。
木曽義仲(佐藤修二さん)もかっこいい。こんなにかっこいいのは、「ギャンブリング」以来かな。得物は「風魔の小次郎」に登場した刀(私物だとか)。これが幅広の両刃の剣で、振るのが大変らしい。冥界から呼び戻された時、頼朝に口に指を突っ込まれたとこはおかしかった。
一度弁慶にやられた後、巴の背後霊…もとい、守護霊っぽくなって、巴とシンクロして動くのがユニーク。
義経達が乗り物を探してるとどこからともなく現れる、童(菅原泉さん)。この時、客入れの時に集めた1円玉を使うのだが、童の請求金額に対していつも1円だけ足りない(笑)。
で、そんなピンチにどこからともなく現れるのが、金売り吉次改め金貸し吉次(金田誠一郎さん)。最初は10万円を無利子・無担保で、次は100万円を無利子・担保は静御前、最後は1千万円を利子は十日で1円、担保は弁慶という破格の条件で気前良く貸してくれる。ま、商人が無償で親切にすることはあまり無いので、これも後々伏線になるのであるが。
勧進帳で有名な安宅の関のシーンでは、何故か歌舞伎調になる。ただし、そこはショーGEKI、普通にはやらない。勧進帳の代わりに出てくるのはなんと早口言葉。内堀さんが結構悪戦苦闘してた(息継ぎのタイミングが難しいようで)。
そこに現れて簡単に早口言葉をクリアするのが、童…のはずが結構噛んでしまってた(爆)。稽古のときは全戦全勝(自己申告)だったそうなのだが。やっぱ、本番には魔物がいるのね。
安宅の関の番人・富樫左衛門は、「ザンダルド」に引き続いて客演のネコ脱出主催・高倉良文さん。や〜やっぱ高倉さん良いなぁ。特に「ぶっちゃけヒマなんです」ってセリフがツボ。
富樫はその後、義経の追っ手を通らせまいとするものの、義仲・巴コンビでは相手が悪すぎ。瀕死の状態になってもなお止めようとするが、極悪人(笑)景時に止めを刺される。ここの富樫はかっこ良かった。
死体になっても続く富樫の受難。頼朝の魔力で、義経へのメッセンジャーにされてしまう。ここで、おのさんの声に合わせて高倉さんが口パクするのだが、これがピタリとリップシンクロしてる名人芸。素晴らしい。
頼朝と政子の実の娘・大姫(筒美きょうかさん)は、頭がかわいそうな人。母様が大好きなのに、当の政子は大姫が嫌いで蹴倒しまくり。最後は政子に毒殺されてしまう。その毒も「飲めばなんでも願いがかなう薬」と騙され、「自分の願いがわからないから母様の願いをかなえてあげる」って言って飲むんだよ〜(号泣)。頭はともかくええ娘やないか、なんで政子はあんなに嫌ってるんだ?。とまあ、傍から見ればかわいそうな大姫だが、本人的には母様の願いをかなえてあげられたので、満足して逝ったようである。それが救いといえば救いかなぁ。
黒川淳さんは、安宅の関の番人役の他、アクションシーンで活躍。特に冒頭での投げられ方は良かった。そっち方面の経験は多いそうなので、もっとアクション演って欲しいねぇ。
<蛇足>
初演時に番人をやったのが内堀さんと亜州香さんらしい。観たいねぇ、ピュアだったころのお二人(笑)。
研修生・天野もえさんと三浦結巳さんは、宮仕えの女達。「女3人寄るとかしましい」というが、6人いるのでうるせ〜こと。噂話やら生写真やら大騒ぎで、なんとなくOLっぽいイメージ。次々変わる方言でのやりとりがおかしい。ちなみに宮仕えの女達は、客入れ時の案内役としても活躍。
政子に仕える美人秘書Aこと葵(福村英里さん)と美人秘書Yこと山吹(石川亜希さん)。山吹は若干気が弱そうな割と普通っぽい人なんだけど、葵はどんな時もほとんどテンションが変わらない若干ヘンな人(笑)。個人的にツボだったのは、葵が政子に向かって言った「根性ド腐れてますね。おほほほほほほ」(爆)。
ショーGEKI大魔王に欠かせないのが、巽徳子さん率いるセクシーダンサーズ。今回は、主に黒拍子として登場し、与一や弁慶を翻弄する。ここで黒拍子を撃退するのが、静御前。白拍子というパラメータ(?)使いどころがうまい。
ショーGEKI大魔王にもう一つ欠かせないのが、全員参加の歌と踊り。演出の羽広さんは、今回踊りを入れるかどうか迷ったらしいんだが、これ無くしてなんの大魔王か(笑)。入れて正解でしょう。今回の踊りは、拳法っぽい動きもあったりして面白かった。歌も、今回歌姫のあけちさんのソロパートとかもあって良い。
かくて奥州平泉に到着した義経と弁慶だが、待っていたのは藤原秀衡ではなく金貸し吉次と童。実はこの二人はグル(というか親子。だからあんなに都合よく現れたのね)。そして、借金のカタに屋敷はおろか平泉ごと差し押さえたとのこと。なんたる超展開、意外にも程がある(笑)。
義経は吉次に借金返済を迫られるが、利子の1円が払えず、さりとて担保の弁慶を差し出すことも出来ず。ここで吉次が提示した打開案は、驚くべきことに「自分たちを斬れ」。義経の清濁併せ呑む王としての資質を見たかったようである。結局斬れない義経に対して、吉次は心底残念そうだった。この商人ならではの対決シーンも実に印象深い。
が、利益なしと見れば切り替えが早いのが商人たるもの。借金の証文を頼朝に売り飛ばし、代金変わりに奥州平泉の自治権を獲得する。まあ、吉次親子も勝ち組かなぁ。
それにしても、思い返してみるに登場人物のほとんどが何らかの意味でカワイソウな気がしてきた。スゴイ芝居である。
私は例によって初日と楽日に観に行ったのだが、楽日にちょっとした珍事が起きた。カーテンコールが終わった後もコンサートのアンコールのように拍手が鳴り止まず、役者さん達が2回目のカーテンコールに登場したという。こういう事もあるのだな。ちなみに、おのさんによると初演時にもカーテンコール2回があったそうな。
というわけで、久々のショーGEKI大魔王は実に楽しかった。
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